総人口の約10%にあたる約1300万人が骨粗鬆症と推計されておりますが、約8割の方が治療を受けていないという実情があります。骨粗鬆症の患者さんは軽微な外力で骨折を起こしてしまい、日常生活動作が非常に悪化してしまうのが大腿骨近位部骨折です。1年間に人口10万人あたり約3000人近くの方がこの骨折を生じ治療後も生活の質が低下し、自分の足で歩き自立した生活が困難となる方が多くなり、生存率は骨折後1年間で約8割、5年間で約5割、10年間で約2.5割となり、一般人口の生存率より非常に低くなってしまうことがわかっております。大腿骨近位部の骨密度が低い人は高い人に比べ死亡リスクが約2.6倍も高いことが明らかになっているため生命予後を悪化させ死亡リスクを高めてしまいます。一度脆弱性骨折を生じると、さらに他部位の骨折を繰り返す骨折の連鎖を生じます。一度大腿骨近位部骨折を生じた後1年間に骨粗鬆症の治療がなされたのは約2割に満たないといった調査結果もあるため再骨折発症を予防するためにも骨粗鬆症治療が必要です。

骨粗鬆症の治療の治療で最も多く処方されているのがビスフォスフォネート製剤などの骨吸収抑制薬です。骨吸収抑制薬治療では、発生頻度は0.001~0.01%とまれですが歯科治療がきっかけで顎の骨が口腔内に露出する顎骨壊死・顎骨骨髄炎という副作用を生じることがあるため抜歯などの骨への侵襲を伴う歯科治療を終えていることが望ましいと発表されています(影響の無い治療もあります)。
シートベルトをしなければ100%死亡する交通事故でシートベルトをすると50%助かるとした場合、シートベルトをしたことで肋骨骨折を生じることと、ビスフォスフォネート製剤治療で脆弱性骨折のリスクが50%減少するが、顎骨壊死などを生じることを似ているととらえる。骨粗鬆症を未治療で脆弱性骨折が発生する骨折リスクを防ぐ方が患者さんにベネフィットがあるとアメリカの学会では説明しております。

健康寿命や日常生活動作、生活の質を低下するのみならず生命予後に大きな影響を及ぼす骨粗鬆症の治療は、将来、寝たきりになることや、要介護状態になることを防ぐために行うものです。骨粗鬆症学会では腰椎と大腿骨頸部で施行することが推奨されているため当院では双方で施行しております(4か月に1回は保険適応となります)。治療効果をみながら様々な骨粗鬆症治療を当院では行っております。<もりした整形外科 院長>